公共財ゲームを実践する場所

社会人サークルを維持していくためには、「公共財ゲーム」(Public Goods Game)の考え方が有効になります。フリーライダー(Free rider)をいかに阻止するかは、非常に重要になります。

公共財としてのコミュニティ

コミュニティを維持していくためには、労力が必要になります。例えば、どの議会を運営するにも、議員には「報酬」が支払われています。コミュニティ維持にコストがかかるので、私たちは「税金」というシステムの中で国・地域コミュニティを維持しようとしています。

コミュニティを維持するには、税金を払っているだけではダメで、多くの人が「前向きに貢献」している必要性があります。例えば、投票行動を行ったり、社会活動に参加したりする行動を行う必要があるのです。その行動がなければ、コミュニティは維持できなくなります。国で言えば、他国からの侵略にもろくなっていきます。

コミュニティの中でフリーライダーが多くなると、コミュニティが全く機能しなくなってしまいます。フリーライダーの存在自体がコミュニティにとってマイナスになるからです。

協力した方が得をする状態

社会人サークルは、「協力した人が損をしていく状況」では、誰も協力しなくなってしまいます。そのため、「協力した方が得である状況」を作り出していく必要があります。

他のプレイヤーが「無料で奉仕してくれる状況」のであれば、自分はそれに「タダ乗り」するのが「最良の選択肢」となります。それでは、無料で奉仕する協力者が損をする可能性があるので、タダ乗りに対して懲罰を出す必要がでてきます。そうすることで、タダ乗りに損をするリスクが発生することになります。

社会人サークルには、真面目に少しずつ続けていれば、自然と知り合いが増えていくので、きちんとした人間関係(困った時に助けてくれる)を構築したり、一緒に出掛けることが出来るメリットを得ることができます。友人を介して良い情報を得ることができることもあるでしょう。

協力しないと損をする

サークル活動に対して、非協力的な態度を取る人をきちんと見極めて、その人に対して排除することで、サークルは健全に機能することになります。社会人サークルは、全員が活動的にならないと活発に活動できません。「やれる人がやればいい」ぐらいに思っている人には、チームから去って貰う必要があります。

コストを得ずに利益だけを得ようとする行為は、人間関係を損なう大きなリスクになります。誰も自分と付き合いがない人間に対して優しく接しようとは思わないからです。人生の時間は有限であり、人間関係は何度も再構築することが難しいのです。年齢が高くなるほど、新しい人間関係を構築する難易度が極めて高いものになっていきます。

例えば、30代後半からは、それまでチヤホヤされていた女性も、積極的に関わろうとする男性が激減して、周囲はどんどん冷たくなっていきます。今まで誘ってくれた男性が誘わなくなる訳ですから、何でも自分から誘わないといけない状況に陥っていきます。

協力することで達成力があがる

人間が1人で行えることは限られていて、協力することで「大きなこと」を達成できるようになります。例えば、1つのビルを建設するにしても、多くの人間が協力しなければ、そもそも建設することはできません。現代社会では、大きなプロジェクト単位で競争しないと、競争力を得られない時代になってきています。

コミュニティというのは、お金でビル建築を目指すのではなくて、皆で協力してビル建設を目指すようなスタイルを取ることになります。

コミュニティの価値を向上させる

コミュニティは、人が活発に活動していなければ、全く意味をなさないものになります。コミュニティには、少しずつ力を出し合って支えていく必要があり、それを怠った人は、コミュニティから除外されていきます。

消費の非競合

ある人が消費をしたとしても、他の人が消費ができる量に影響はない場合があります。例えば、公共の電波であったり、公園の利用なども、誰でも利用できる状況であり、誰かの消費が損、得に影響することはありません。

グループの選択

日本には数多くの登山サークルがあり、どこかのチームを選択するか、自分でチームを立ち上げることになります。

出資ゼロのフリーライダー

自分自身が何もしないで、グループから利益だけを享受しようとする人もいます。自分自身が出資することによる「インセンティブ」を明確化できるようにしておく必要があります。趣旨をすれば得をする状況にしておかなければ、誰も出資を行わなくなってしまいます。

チームにフリーライド出来ることを認めると、その組織がフリーライダーによって搾取されることになり、誰も貢献者がいなくなる状況になります。フリーライドできないということを明示しておく必要があります。

コストが上回る場合

社会人サークルに在籍していると、周囲と全く馴染むことができず、むしろ嫌われている人は、その存在自体がグループにとって「コスト」になります。そのような「嫌われ者」に対しては、周囲の合意を取り付けた上で、グループから排除していく必要がでてきます。そうしなければ、グループ自体に協力する人がいなくなってしまうからです。

趣味では協力関係になりやすい

例えば、オンラインゲームでは、全く知らない人同士がチームを作って戦うことがあります。オンラインゲームにおけるインセンティブは、お金ではなくて「満足感」にあり、その満足感を高めるために、実利性が極めて低いゲームのみの世界で協力関係を構築するのです。

得られるインセンティブ

先ず、「信頼できる人と出会える」ということは、世の中で「意外とコストがかかること」です。村社会ではない現代社会人になって、長期で付き合える信頼できる友達を見つけるのは、かなり大変なことです。そして、長期で付き合える信頼できる友人がいなければ、人生で幸福度が低下することになります。

例えば、個人的に山アプリで山仲間を募集したりしても、それを毎回繰り返すのは大変なことです。やはり、人が定期的に集まるようなプラットフォームの存在は必要になります。つまり、個人で新しい人に出会いを持とうとするよりは、チームを通じて新しい出会いを持った方が良いのです。

チームであれば、個人が良い人か悪い人かを「客観的に」判断することができます。他の人に意見を聞くことができるからです。

ゲーム理論のナッシュ均衡

経済学のゲーム理論で有名なのは、ナッシュ均衡であり、メンバー全員が寄付を行わない状態になります。他の人がどのような寄付行動を行ったとしても、自分にとって最も有益なことが「寄付をしないこと」であり、それが「最も合理的な選択」となります。

これを避けるためには、「チームの成長と自分の成長をリンクさせる」必要があります。そうすれば、全員がチームに対するコミットは最大化されることになります。

友達に対して優しくする

人間は、誰しも「見返りがない人間関係を嫌う傾向」があります。自分の限られたお金・時間は、見返りがあるものに対して有効活用したいと思うものでしょう。

選択肢が限定されている

人間には、多様な選択肢があるようで、実際にはそれほど多くありません。今、保有しているお金が少なければ、スーパーで買えるものも限られるでしょう。人間関係に対して時間と労力を投入していなければ、そこで信頼を得ることは困難となり、孤立することになります。

他の出会いの手段がない

社会人サークルが「不完全なもの」であったとしても、それ以外に「代替手段が見つからない状態」では、そこに参加せざる得ない状況にもなるでしょう。世の中の多くの人は、「自分が都合良くフリーライド出来る場所」を探すものですが、実際に良く運営された社会人サークルは、ほとんどありません。

人間の幸福というのは、相対的なものであるので、他に出会いの手段がなければ、そのグループに満足しなくても、そこに留まるインセンティブになることがあります。何もしなくても、そのグループに留まれる状態になると、多くの人が「何もしない」という選択をとりたがる傾向があります。

近い人に出資したくなる心理

家族と遊ぶ時には5万円出せるとしても、恋人と遊ぶ時には2万円になるかもしれませんし、友達と遊ぶなら1万円になる可能性があります。知らない人と遊ぶならば、楽しい可能性が低下するので、5千円が限界になるかもしれません。つまり、人間は状況に応じて自分の出資額を調整する傾向があります。

誰しも近い関係に出資したくなるものなので、社会人サークルを「自分の気の合う仲間を探す場所」という選択を取れば、社会人サークルの人間関係を紹介した貰うタダ乗りした状態のフリーライダーとなります。

お金以外の満足度の提供

お金をいくら提供しても、幸福度はその時しか高めることができず、もっと欲しいと思うことになるでしょう。

会社とサークルの違い

国の場合には、その国籍を変更するのは極めて困難なことです。会社の場合は、本人の希望で退職することはできても、会社側から退職させることは難しいでしょう。

何もしないことは得にならない

子供の頃は、両親を含めて社会がお金を支払ってくれて、社会が顧客のように面倒を見てくれることがあります。しかし、大人になってくると、グループから自分だけが「最良条件」を引き出すことは難しくなります。自分もグループに対する貢献が必要になるのです。

本当に何もしないことが得になるということはありません。何故なら、どこかのコミュニティに所属した方が、個人で戦うよりも有利であることが多くなるからです。何かコミュニティに所属していることは、人生をより豊かなものにできることは間違いありません。

目に見えにくい利益の計算

経済学の数値化できないのは、目に見えない長期的な利益というものが存在している場合があります。例えば、天敵が現れた時に大声で叫んだ人は、その天敵の餌食になる可能性が高くなりますが、グループの存在を救うので「長期的に周囲からの信頼を集められる可能性」があります。周囲からの信頼は、群れの中で高い地位にいられることをしまします。さらに言えば、日常的に天敵に注意を払っている人は、天敵を見つける「能力値が高まっていく」可能性もあります。その能力は、別のグループに行っても重宝される可能性があります。

ただし、天敵が現れて大声で叫んだ時に餌食になるリスクは非常に大きなもので、得られる「リターンは不確実なもの」なので、誰も最初に叫びたがらないでしょう。そのリスクを取り続ければ、周囲からの信頼は大きなものになり、逆に何もしない人は周囲から信頼を得られずに排除されます。チームの中では、何もしない人=いてもいなくても同じ人と判断されます。

全く同じ行動をとったとしても、「利益を認識」することによって、「利益を増大させることができる」ことができます。そして、その副産物による利益は、時間の経過とともに増大する傾向が見られます。

有料サークルの欠点

有料サークルにおける最大の欠点は、「お金を払えば誰でも参加できる」という点です。少額のお金を払えば誰でも参加できる状況は、チームとして機能しづらくなり、フリーライドする人ばかりが来る状況になりかねません。

お金を参加のハードルにすると、「金さえ払えばいてもいい」ということになるので、フリーライドになりかねないのです。

協力しない人に対する罰則

社会人サークルを維持するためには、協力しない人に対しては、罰則を加えていくことも大切になります。この懲罰の仕組みを整えるのは、非常に難易度が高いことでもあります。誰が組織に悪影響を及ぼしているかを見抜くのは、極めて難しいことだからです。

社会人サークルの懲罰としては、他の人のイベントに参加できなくなったり、警告が行われたりすることがあります。それでも改善が見られない場合には、最大限の懲罰として「除名」が行われます。お金を支払っているサークルでは、除名ハードルが高くなりますが、お金を支払っていないサークルでは、除名ハードルが低くなります。

協力しない方が得になる

自分が出資するものが大きいのに、リターンが小さい場合には、誰も出資しなくなってしまいます。そのため、「チームに協調した方が得である」という状況を作り出さなくてはいけません。

ゆるいアウトドアサークルの場合

ゆるいアウトドアサークルでは、男性が全員イベント開催者になることで、面白い・楽しいイベントを追求することができます。ゆるいアウトドアサークルでは、少なくとも男性は「フリーライドはできない仕組み」になっています。フリーライドした場合、フリーライドするなという警告を行ったり、改善の見込みがないと判断する場合に会員から削除されます。

サークル主催者がお金を取らないサークルでは、自分のみが一方的にイベントを開催して、誰かの紹介を続けることはできません。そのため、イベント開催に関わって貰う必要が出てきます。

男性が他の人のイベントに参加してばかりで、男性でイベントを行う意思を示さない人は、社会人サークルに必要ないので、フリーライダーとして「排除」されます。また、女性がサークルに参加しない場合にも、同様に「フリーライダー」として「排除」することで、サークルをアクティブに保つようにします。そこには、きちんとイベント開催・参加の記録を付けることで、公平さを保つ必要性があります。

ゆるいアウトドアサークルに残るのは、必然的に「イベントを行う男性」と「定期的に参加している女性」に限定されることになります。イベントを行わない男性と、定期的に参加しない女性を排除することで、サークを長期的に見ると「知り合いが増えて活性化する」という状況になります。