羅臼岳(1661m)は、日本100名山にも数えられる山で、登山愛好家に人気の山になっています。2025年夏にゆるドアメンバーで夏の羅臼岳に登山に行きました。その2週間後、男性(26)が同ルートで熊に襲われて死亡する事故が起きました。
ヒグマ襲撃事件の概要
2025年8月14日、北海道・知床半島の羅臼岳で岩尾別コースを下山中の登山者の男性(26歳)がヒグマに襲われ、拉致・殺害される事故が発生しました。数日後に男性は発見されますが、DNA鑑定により死亡が確認され、事件発生後には現場付近でヒグマの親子3頭が駆除されました。
この事故を受け、羅臼岳の登山道は閉鎖され、専門家は人慣れしたヒグマによる捕食行動の可能性を指摘し、今後の対策の重要性を強調しています。

羅臼岳・岩尾別コース
羅臼岳岩尾別コースは、ヒグマが頻繁に目撃される登山道です。
2025年も数多くの目撃情報がありましたが、襲われた登山者がいなかったので「ヒグマが襲ってくることはないだろう」と思われていました。

男性がヒグマに襲撃された樹林帯
男性がヒグマに襲撃された樹林帯は、登山口を入ってすぐの場所です。男性は、一緒に来ていた友人より100メートルほど先を1人で先行した状態で走って下山中、ヒグマに襲撃される事態となりました。

友人は男性の叫び声を聞いて駆け寄って救助しようと試みますが、熊は男性を咥えたまま藪の中に引きずり込んでいきました。
男性は熊スプレーを保持しておらず、友人は「熊忌避スプレー」(恐らくツキノワグマ用)を保持しており、噴射を試みたが(中身が空だったのか)できなかったということです。

熊忌避スプレーは、熊撃退スプレーに比べて弱いもので、ツキノワグマに効果があるとされていますが、ヒグマを撃退できる用途ではありません。
人に慣れていた母熊
2014年頃に出生した母熊は、この登山道で頻繁に登山者と会う中で、人に慣れた可能性が指摘されています。人慣れした熊は、人を見ても逃げないようになっていきました。
8月10日には羅臼岳・岩尾別コースの登山道で、この親子ヒグマが登山者に3~4mまで接近した事態が起こっていました。また、8月12日には、登山者が熊スプレーを噴射した後も5分ほど登山者につきまとったということです。
8月12日の時点で「登山道を閉鎖」する決断をしていれば起こらなかった事件ではありますが、登山者が多い8月に閉鎖を決断するのは難しい事情もあったでしょう。


木下小屋でのレンタル
羅臼岳のふもとにある「木下小屋」では、熊スプレーを1日1000円でレンタルすることができます。
私たちも登山を行う時に「レンタルしたい」と管理人に申し出てみました。しかし、管理人は「そんなものは必要ない。熊に出会ったら慎重に」と言ってレンタルを断られてしまいました。
今まで多くの登山者が登山していますが、事故が起こっていなかったことに油断があったかもしれません。ただ、この親子ぐまに関しては、2025年だけで30件以上の目撃情報がありましたが、人に危害を加えることはありませんでした。

知床初のヒグマ死亡事故
知床半島は、世界屈指のヒグマ密集地域とされている地域ですが、今までヒグマに襲われて死亡した事件が起こっていない場所でした。そのため「知床のヒグマは人を襲わない」とまで言われていた場所でもあります。
斜里町は、ヒグマが身近に生息していながらも、過去に襲われた記録がないのです。
人慣れが加速している
知床財団(羅臼町・斜里町が設立したNPO法人)は、「知床の熊が人に慣れてきている」と指摘します。2005年に世界遺産に登録されて以降、その雄大な自然が多くの観光客を魅了してきました。その結果、熊と人の位置が接近してしまいました。