谷川連峰1泊2日で秋の紅葉を楽しむ

今秋のメイン登山として「谷川連峰の西面」を1泊2日で縦走する登山を行いました。谷川岳は、初級者から上級者の縦走・雪山・ロッククライミングまで楽しめる山です。今回の縦走登山は、のぼり3200mという体力的にやや厳しい登山となりました。日頃からの運動が重要だと思った登山でした。

縦走を終えて思うのは、縦走と言うのは、本当に「山の旅である」ということです。

大障子避難小屋
大障子避難小屋

谷川岳の立地

谷川岳は、新潟県と群馬県の境(いわゆる上越国境)にある山です。その地下を「関越トンネル」(&上越新幹線のトンネル)が貫いており、長いトンネルを抜けると雪国(新潟側)に入ります。余談ですが、1985年10月に関越トンネルが開通するまでは、三国峠を通るルートで苗場スキー場にアクセスするルートが群馬から新潟に行く主要道路としてに賑わっていました。

谷川岳は、JR上越新幹線の「上毛高原駅」から谷川岳ロープウェイまでバスを使って45分ほどでアクセス可能で、首都圏から山頂に登頂して日帰りができる山として人気があります。東京ー上毛高原駅は、僅か1時間の新幹線で直通であり、1万円ほどで往復することがえきます。

初心者から上級者まで

谷川岳は、言わずとしれた「世界いち死者が多い山」として、ギネス記録にも認定されている山です。その多くは、一ノ倉沢でロッククライミング中であったり、積雪がある冬期登山中の滑落、残雪中の滑落になっています。

谷川岳の秋登山では、滑落の危険性よりはむしろ「天候悪化による低体温症」などに注意する必要があるでしょう。今回、さすがに「死者が多い谷川岳」ということで、安全のために防寒の装備を多めにしたのですが、そのためにザックが重くなって大変でした。防寒具を省略することはできないので、寝袋などの軽量化を考えないといけないとは思いました。

谷川岳 縦走登山
谷川岳 縦走登山

谷川岳の避難小屋

谷川岳は、初級者から上級者まで登山できる山として人気があります。しかしながら、天候が変わりやすいので、シェルター型の避難小屋が点在しています。シェルター型の避難小屋は宿泊に適していませんが、縦走するならどこかに宿泊しなければならず、水場が近くて、少し広めの「大障子避難小屋」に宿泊することになりました。広めと言っても、4人ぐらいが限度かと思います。非常時に避難するという目的であれば、無理すれば10人ぐらいは寝ることができるそうです。

10月の谷川岳

谷川岳は、10月中旬に紅葉の見頃を迎えるのですが、例年の状況を見ると、10月下旬に積雪があって登山道も滑りやすくなるので、10月中旬頃に登山するのが適切と言えるでしょう。夏は例年7月上旬頃に雪解けとなり、高山植物も見られるようになりますが、今度は体温が上昇しやすくなり、熱中症に注意が必要となります。

日時:2023年10月18日、19日
メンバー:KK、ヒロ
行程:1泊2日(大障子避難小屋泊)
タイム:35.0時間
全距離:31.5km
標高差:登り3244m、下り3238m
登山ルート:土樽駅 → 茂倉新道登山口 → 矢場の頭 → 茂倉岳 → 一ノ倉岳 → 谷川岳(オキの耳・トマの耳) → オジカ沢の頭 → 小障子ノ頭 → (大障子避難小屋泊)→ 大障子ノ頭 → 万太郎山 → エビス大黒ノ頭 → 仙ノ倉山 → 平標山 → 土樽駅

谷川ロープウェイ

1959年に開業した谷川岳ロープウェイを使えば、標高1319m地点の「天神平」付近までロープウェイまであがれるので、標高差600メートルほど、登山の初心者でも谷川岳頂上に立つことができます。基本的には、ロープウェイを使った登山が一般的な日帰り登山となります。

ロープウェイを使わない場合には、三大急登とまで言われる「西黒尾根」を登る体力勝負する登山になり、登山道沿いに水場が限られていることもあって、夏に下から自力で登山するような山ではありません。やはり、秋に紅葉を楽しみながら登山をするのが最適な山であると言えるでしょう。

谷川岳の避難小屋

谷川岳は、遭難が多い山としても知られているので、避難小屋が点在しています。しかし、谷川岳の避難小屋は、一部の避難小屋を除いて「シェルターのようなもの」が多いので、快適に宿泊できるものではありません。快適に宿泊したい場合には、「茂倉岳避難小屋」が水場も近くて良い選択になるでしょう。

大障子避難小屋は、水場にアクセス(20分ほど)できるので、谷川岳の縦走登山でも良く使われるようです。

谷川岳1泊2日縦走

土樽駅を出発して、谷川岳(オキの耳・トマノ耳)を経て、万太郎山、平標山を経て、土樽駅に戻ります。土合駅から登る「西黒尾根登山口」から谷川岳の西側を縦走するルート(のぼり約2600m,22km)と比較しても、今回の周回ルートはさらに体力を必要とします。

土樽駅 → 茂倉新道登山口 → 矢場の頭 → 茂倉岳 → 一ノ倉岳 → 谷川岳(オキの耳・トマの耳) → オジカ沢の頭 → 小障子ノ頭 → (大障子避難小屋泊)→ 大障子ノ頭 → 万太郎山 → エビス大黒ノ頭 → 仙ノ倉山 → 平標山 → 土樽駅

Day1 2023.10.18

合計8h55m(休憩2h30分)
距離13.3km のぼり2002m くだり927m
1日目だけでのぼり2000m以上に達していました。

土樽駅出発

土樽駅を出発したのは、朝の7:15頃でした。ここから登山口までは、車道を歩くことになります。

茂倉新道登山口

土樽駅から、矢場の頭を経由して、茂倉岳(1977m)を目指していきます。そこから、一ノ倉岳を経由して、谷川岳山頂(オキの耳、トマノ耳)に至ることになります。万三郎岳に登頂した後、さらに西側を目指して、平標山を経由して、土樽駅に帰ってきます。

樹林帯の中を歩いて標高をあげていきます。中腹の紅葉が綺麗です。

矢場ノ頭

土樽駅からしばらく登っていくと、1時間半ほどで「矢場ノ頭」に到着します。急登を登ってきているので、既にそれなりに疲れていますが、まだまだ先は長いです。

矢場ノ頭(1490m)あたりは、見事な紅葉を見る事が出来ました。10月中旬は、標高1500mぐらいが見頃と言えるでしょう。広大な紅葉の中を歩くことができて、テンションがあがります。

茂倉岳避難小屋

茂倉岳避難小屋は、谷川連峰の避難小屋の中でも、特に立派な避難小屋で、トイレ完備、水場も30メートルほど下に降りたすぐの場所にあって非常に便利です。総合的に見て、非常に快適性の高い避難小屋になっています。

首都圏などからアクセスして、登山時間が遅くなった場合には、ここに1泊して縦走プランを組み立てることもできそうです。茂倉岳避難小屋から、茂倉岳の山頂までは、10分ほどで到着することができます。

茂倉岳避難小屋

新しい避難小屋の中は、しっかりとした柱で雪の重みに耐えられるようになっています。

茂倉岳避難小屋

茂倉岳の山頂

茂倉岳避難小屋から歩いて、茂倉岳の山頂(1978m)に到着しました。

一ノ倉の尾根沿い

茂倉岳を経て、一ノ倉岳を目指します。尾根沿いは、東側が切り立った崖になっていて、多くのロッククライマーがここで命を落としていることで知られています。

一ノ倉岳に到着

一ノ倉岳には、石でできた小さな標識があるのみです。私たちは、ここで昼食の休憩をとることにしました。

一ノ倉岳避難小屋

一ノ倉岳避難小屋は、シェルター型の避難小屋です。かなり錆び付いていることからも、設置時期が相当に古いことが分かります。快適な小屋とは程遠い小屋ではありますが、床がきちんと板になっているので一定の清潔感は保てます。この稜線上で暴風が来たら、ここに避難できたら命は助かるだろうなと思います。

迫力のある稜線

天気が良いので、一ノ倉岳避難小屋から谷川岳を見る事が出来ます。2つの峰が耳のように見えます。稜線の東側が切り立った崖になっており、西側に登山道があります。この登山道自体は、天気が良ければ、それほど危険がなく歩くことができます。

断崖絶壁の西側にある登山道を通っていきます。登山道を歩いている時には、向こう側は良く見えないので、そんなに恐怖を感じることはありません。天気が良いので、とにかく稜線がはっきりと見えて、景色が良かったです。

谷川岳オキの耳

谷川岳オキの耳は、こぶのように見えます。見ての通り、西側がゆるやかですが、東側が断崖絶壁です。

谷川岳オキの耳

谷川岳の山頂であるオキの耳に到着です。

オキの耳

谷川岳トマの耳

断崖絶壁から滑落しないようにロープが張られています。谷川岳自体は、登山の初心者でもロープウェイを使えば、気軽に日帰りできる山です。そのため、平日だというのに、紅葉を目当てにする多くの人で賑わっていました。

谷川岳トマの耳に到着です。

トマの耳

肩ノ小屋

谷川岳・肩ノ小屋は、谷川岳の頂上直下にある小屋です。谷川岳ロープウェイを使ってアクセスすれば、初心者でも山小屋泊を楽しむことができます。夏にロープウェイを使ってくれば、楽しいんだろうなと思いました。

谷川岳・肩ノ小屋

売店には、様々なものが整然と並べられています。

谷川岳・肩ノ小屋の売店

肩ノ小屋で休憩

谷川岳の肩ノ小屋前で休憩しながら、西の方角を眺めています。かなり疲れていたので、普段は飲まないコーラ(350円)を購入しましたが、缶だったので10秒で飲み終えました。

肩の小屋からは、西方向に平標山まで伸びていく稜線を見ることができます。明日以降、ここを縦走すると思うと、そんな頑張れるかなーという気持ちになってしまいます。

垂直の鎖場もあります。足場が意外としっかりとしているので、垂直でも意外といけるものです。

非常に美しい稜線が見えていますが、「細い稜線大丈夫だろうか」と少し心配になりました。実際に行ってみると、そんなに危険な場所がある訳ではなかったです。ただし、距離が長かったので、体力を消耗しました。

オジカ沢の頭

14:30頃にオジカ沢の頭に到着しました。相変わらず天気が良くて、360度見た和すことができます。ペースとしては、予定よりも若干遅れている程度でした。

オジカ沢の頭

オジカ沢避難小屋

オジカ沢避難小屋は、肩の小屋から西方に行った場所にある避難小屋です。肩ノ小屋から南方に下る谷川岳ロープウェイに行く人は見る事がない山小屋になります。

オジカ沢避難小屋
オジカ沢避難小屋

小障子の頭

小障子ノ頭まで到着することになりました。

大障子避難小屋(宿泊場所)

本日の目的地である「大障子避難小屋」が見えてきました。ようやく1日の行程を終える事が出来ると思って、ひと安心です。南側に水場に行くルートが見えます。15:00頃に小屋に到着して、少し休憩してから水場に水を調達しに行きました。

大障子避難小屋は、夜中に「この小屋ごと吹き飛んでしまうのではないか」と思えるほどの強風が吹き荒れて、外に外出するのも危険な状況でした。小屋の中は、安全地帯となっていましたが、夜にトイレするために外出すると、強風で飛ばされそうになりました。さすがは、谷川岳だと思いました。しかし、朝になると強風がおさまって、7時頃にガスもなくなりました。

Day2 2023.10.19

合計8h58m (休憩49分)
合計18.2km のぼり1235m くだり2310m
出発7:00 下山16:00
周囲にガスがかかって視界が悪いかったので、朝は7:00出発としました。7:00に出発して、大障子ノ頭、万太郎山を経由して、仙ノ倉山頂、平標山を経由して土樽駅に下山するコースです。

とりあえず、大障子ノ頭を目指して登っていきます。写真で若干右側のピークに見えるところが大障子ノ頭です。

大障子ノ頭

7:18分頃に大障子ノ頭に到着しました。標識は、草木の中に埋もれています。大障子ノ頭は、「万太郎山」の通過点でしかありません。

大障子ノ頭からは、はるか遠方に万太郎山が見えます。昨日の疲れも取れない中で、更にこの急登を登り切れるか不安になってきます。

とにかく急勾配を登っていくことになります。

万太郎山山頂

ようやく万太郎山の山頂(1954m)に到着しました。万太郎山からは、そのまま土樽駅方面に下山する(吾策新道)ことも可能です。私たちの計画では、仙ノ倉山、平標山を経て下山するというものです。

万太郎山でようやく行程の半分でしかありません。さらに西方向の仙ノ倉山・平標山に足を進めていきます。まだまだ、先は長いです。

万太郎山頂(1954m)からは、標高を1572m地点まで、400m近く標高を下げていくことになります。両脇が崖になっている場所もありますが、意図的に下でものぞき込まない限りは、転落の危険は少ないと思います。

今度は、下りになって標高を下げていきます。

越路避難小屋が見えてきました。あの尖った頂上が「エビス大黒ノ頭(1888m)」が迫ってきました。

越路避難小屋

万太郎山からエビス大黒山に至るまでのコース上にあるのが「越路避難小屋」になります。小型シェルターで、5人入ると一杯になってしまいそうな小屋です。

エビス大黒ノ頭まで登っていきます。本当に大変です。

エビス大黒ノ頭

9:45分頃にエビス大黒ノ頭に到着です。

エビス大黒ノ頭を下っていきます。

エビス大黒ノ頭を下ってからは、仙ノ倉山まで一気に登りが続きます。この登りは、マジでヤバいです。うそでしょ?これを登るんですか!と言いたくなる心境になってました。今回の登山で最もきつかった場所です。

写真で中間地点にポツンとあるのが「エビス避難小屋」になります。

エビス大黒避難小屋

エビス大黒避難小屋は、エビス大黒ノ頭から、仙ノ倉山の中間地点にある避難小屋です。こちらも非常に小型のシェルターといった感じで、3名が就寝するのがやっとです。知らない人と狭いシェルターなら地獄は間違いなしです。

仙ノ倉山頂

仙ノ倉山は、標高2026mで谷川連峰の最高峰となっています。

仙ノ倉山から平標山に至る道は、良く整備されています。

標高が高い地点は、豪雪と強風で草木があまり育たず、そのために見通しが良くなっているのです。

平標山山頂

平標山の山頂に到着しました。

平標山頂上下に広がっている湿原

紅葉を見ながら下山

周囲の山に広がる紅葉をみながら下山していく事になります。ここからさらに下って樹林帯に入っていくと、紅葉が広がっています。

樹林帯の紅葉が最高

樹林帯に入ると、紅葉が最高に綺麗でした。

渡渉ポイント

増水時には注意が必要とされている場所を渡渉します。この日は、天気が良くて水位も低かったので、特に問題なく渡渉することができました。雨天時などで水位が高ければ、十分に注意を要する場所かと思います。

水が切れてしまったので、やむなく指定場所でないこの辺りで浄水器を使って水を補給しました。

渡渉した後も、登山道は水辺沿いを下山していくことになります。天気は良かったのですが、登山道の足元がグチャグチャの所もあり、濡れることもあります。雨が降ったら本当に大変だなと思いました。

群馬大ヒュッテ

平標新道を使って高度をさげていくと、群馬大学のヒュッテがあります。群馬大ヒュッテからは、道路を4キロほど歩けば全日程が終了となります。

砂利道の車道を進んでいく事になります。途中で水が流れているところがあります。

大障子避難小屋

1日目は、大障子避難小屋に宿泊します。到着してから、荷物を置いて、すぐに水場に向かいました。水場から戻ってくると、周囲がすぐに暗くなりました。暗くなるだけなら良いのですが、何だか風がとんでもなく強くなってきました。外に外出すると霧がかかって、トンデモなく吹雪いてきました。もはや、小屋の中でじっとしていることにします。

土樽駅に帰還

土樽駅に戻ってくることができて、長かった山行を終える事が出来ました。

土樽駅
土樽駅

山行の反省点

今回は、夏の登山の時よりも、運動不足で体力が低下していた上に、谷川岳に到着する前にも仕事したりして疲れていたこともあり、体力的にかなり疲れてしまいました。それでも、無事に全行程を終えられたから良かったのですが、相当に体に堪えたことは確かです。荷物に不要なものもあり、準備の段階で荷物が少しでも軽くできるように工夫することの大切さも痛感しました。

夕食は、尾西のアルファ米にさすがに飽きてしまったので、もう一工夫が必要だなと思いました。あとは、カレー系などは、拭き取るのに手間がかかるので、やめた方がいいなとおもいました。種なし梅みたいな酸っぱいものは、意外と重宝するなと思いました。